多音字について

 中国語の漢字には、複数の発音をもつものが数多くあります。これまで出てきた例としては、「地」に「de」「di4」の2音があったこと、「宿」に「su4」「xiu3」「xiu4」の3音があったのが、それに当たります。発音の微少な差を区別することにより、意味を区別するのです。

 たとえば孔子の時代、このような声調による読み分けが存在したのか、それは分かりません。なかった、と考える学者が多いようです。しかし、『千字文』の書かれた頃には、確実にそれは存在しました。6世紀に書かれた『経典釈文』という書物は、経書の字句の「読み分け」を徹底的に記録したものです。そして引き続き、現代中国語でも多くの読み分けがあり、『新華字典』にも記載されている、というわけです。

 しかも、重要な字に限って、「読み分け」が必要な多音字となっている傾向があります。初心者からすると、音が複数あるのは面倒なのですが、仕方ありません。英語やドイツ語の動詞が、重要な語に限って不規則な変化をするのとちょっと似ています。

 漢字をたくさん知っているからといって、中国語に関する教養がある証拠にはなりませんが、「読み分け」は確実に把握しておくことが大切です。「読み分け」を間違えると、その人の教養に疑問符がつきかねません。中国人の学者の中にも、「読み分け」に無頓着な人がまれにありますが、感心できません。自戒も込めて、「読み分け」に敏感でありたいものです。

★多音字の問題については、「多音字と去声」のエントリーもあわせてお読みください。

xuetui について

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